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第7話 苛立ち②

last update تاريخ النشر: 2025-06-05 18:06:53

 次の日から、さくらは誠一専属のメイドになった。

 誠一は、智彦にさくらを自分の専属にしたいと頼み込んだ。

 聖のお気に入りであるさくら。誠一専属にすることを智彦はなかなか承諾しなかった。

 しかし、誠一の熱意に負けた智彦は、しぶしぶ承諾してしまう。

 誠一からさくらに強要されたのは一つ。

 仕事に付き添い、そこで会う人たちの未来が見えたとき、誠一に報告すること。

 ライバル企業や取引先、誠一にとっての重要人物たち。

 誠一は毎日さくらを連れまわし、その人物たちに会わせていく。

 さくらは見えた未来の内容を、逐一報告していった。

 その後、誠一がその情報をどう使用したかはわからない。

 しかし、現実に誠一の仕事は好調で、彼の地位はみるみる上がっていった。

「誠一、最近よく頑張っているらしいな」

「ありがとうございます」

 智彦に褒められた誠一は爽やかに微笑む。

 そして、横にいるさくらに目をやり、ニヤリと不敵に笑うのだった。

 夕食のあとのティータイム、さくらは聖に呼び止められた。

「さくら、ちょっといいかな」

 聖はさくらを自室へと招いた。

 なんだか聖の表情が暗いことが気になったが、さくらは素直に聖の後ろをついていく。

 誘拐事件以来、聖とは気まずい空気になってしまい、お互いすれ違っていたので、聖から誘ってくれたことがさくらは嬉しかった。

 部屋に入ると、急にさくらは聖の手により壁に追いやられる。

 さくらの肩を壁に押しつけ、聖が迫ってくる。

 すぐ目の前に聖の顔があり、さくらの頭は混乱し目が回ってしまう。

「ど、どうしたんですか?」

「どうした……はこっちの台詞だよ。なんで兄さんの専属になったの?」

 聖は悲しみと怒りを込めた目で、さくらを見つめた。

 今まで見たことも無い表情をした聖に驚き、さくらはまともに目を見ることができず、視線を逸らしてしまった。

 どう答えればいい? どう言えば納得してもらえる?

「誠一様は、お仕事が忙しいらしく、手伝ってくれる人が欲しかったようで……私が指名されました」

 必死に考えた答えがそれだった。すぐさま聖が追及してくる。

「なんで君なんだ? 他にもメイドはいる」

「それは――私にはわかりません」

 さくらが黙ると、聖もしばらく黙ってしまう。

 先に口を開いたのは聖だった。

「僕は、我慢していたんだよ……。

 僕だって昔からさくらを専属にしたかった。でも、そんなことしたら君が嫌かもしれないとか、他のメイドたちから何か言われるかもとか、色々考えてやめていたんだ。

 専属にしてもいいなら、僕の専属にしたかった!」

 聖は苦しそうに息を吐いて下を向く。

 そんな風に想っていてくれたなんて――。

 また、さくらの知らない聖の想いを知り、嬉しくて、さくらの心は満たされていく。

 聖への想いが破裂しそうになるのを必死で押さえるので精一杯だ。

 私だって聖の専属になりたかった、と言いたい、けど言えない。

 さくらも苦しげに息を吐き、天を仰ぐ。

 突然さくらの顔は両手で掴まれ、聖の方へと向かされた。

 かと思うと、あっという間にさくらの口は聖の唇に塞がれる。

 一瞬止まったかのような時が流れる。

 え? どういうこと? 何が起きているの?

 さくらが固まって動かずにいると、聖の唇がさくらの唇からゆっくりと離れていく。

「……ごめん」

 そうつぶやいた聖は、さくらを残してその場から走り去っていった。

 一人残されたさくらは、たどたどしく両手を唇に当てた。

 しばらく呆然としていたが、徐々に涙がこみ上げてくる。

 唇には、まだ彼の感触と温もりが残っていた。

 本当なら、死ぬほど嬉しいはずなのに、素直に喜ぶことができない自分が悔しくて、彼の想いを受け止めたいのに、受け止められないことが辛くて……。

 涙が次々溢れてくる。

 さくらは声を押し殺し、その場にうずくまった。

 そして、泣き崩れ、そのまま時は過ぎていく。

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تعليقات (1)
goodnovel comment avatar
憮然野郎
さくら、ついに聖にキスされちゃいましたね! 嬉しいはずなのに悔し涙って…切なすぎますよね🥲 今回誠一の専属になってしまった為に聖の気持ちに応えられないなんて、辛いですよね......
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